ISBN:4087472221 文庫 夢枕 獏 集英社 ¥724
夢枕獏の神々の山嶺を読了した。旅行記物が好きでいろいろ読み漁ってきたがそろそろ読む本もなくてってきて、そんなところでこの本を手に取った。
夢枕獏はあまり読んだことがない。イメージ的に俺好みの本を書かなそうな気がした。
山岳小説も、読んだことがない。自分に縁がないから。
この本を手に取ったのは舞台がネパールであることと、どこかのサイトで旅本として紹介されていたからだ。
主人公深町がカトマンドゥの古物屋で偶然見つけた古いカメラ、それは登山家ジョージ・マロリーがエヴェレストに初登頂に成功したのかと言う謎を解き明かすものだった。カメラを縁に出逢った孤高のクライマー羽生。彼の目指すものはエヴェレスト南西壁冬季無酸素単独登頂という途方もないものだった。
カメラ、カトマンドゥ、羽生の過去、そしてエヴェレスト。エヴェレストに吹きつける風や温度まで描写しきる作者の表現力に圧倒され、まさに自分が今エヴェレストに挑んでいるかのような臨場感を得ることが出来る。そしてその行為がいかに困難かと言う事も。
登山に関してまったく知識がない俺にはいったい何故山に登るのかと言うのが理解できなかった。
「そこに山があるからだ」(ジョージ・マロリー)と言うような曖昧なものではない答えを、この本は解き明かそうとしている。熱く、泥臭い、ストレートな登山家の想いを感じることが出来る。
読んでいて心が奮い立つ、そんな本だ。
夢枕獏の神々の山嶺を読了した。旅行記物が好きでいろいろ読み漁ってきたがそろそろ読む本もなくてってきて、そんなところでこの本を手に取った。
夢枕獏はあまり読んだことがない。イメージ的に俺好みの本を書かなそうな気がした。
山岳小説も、読んだことがない。自分に縁がないから。
この本を手に取ったのは舞台がネパールであることと、どこかのサイトで旅本として紹介されていたからだ。
主人公深町がカトマンドゥの古物屋で偶然見つけた古いカメラ、それは登山家ジョージ・マロリーがエヴェレストに初登頂に成功したのかと言う謎を解き明かすものだった。カメラを縁に出逢った孤高のクライマー羽生。彼の目指すものはエヴェレスト南西壁冬季無酸素単独登頂という途方もないものだった。
カメラ、カトマンドゥ、羽生の過去、そしてエヴェレスト。エヴェレストに吹きつける風や温度まで描写しきる作者の表現力に圧倒され、まさに自分が今エヴェレストに挑んでいるかのような臨場感を得ることが出来る。そしてその行為がいかに困難かと言う事も。
登山に関してまったく知識がない俺にはいったい何故山に登るのかと言うのが理解できなかった。
「そこに山があるからだ」(ジョージ・マロリー)と言うような曖昧なものではない答えを、この本は解き明かそうとしている。熱く、泥臭い、ストレートな登山家の想いを感じることが出来る。
読んでいて心が奮い立つ、そんな本だ。
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ISBN:4309015700 単行本 綿矢 りさ 河出書房新社 ¥1,000
公約どおり「蹴りたい背中」を読んだのでレビューを書いてみる。
文章は、うまくはない。わかりづらい箇所も多々ある。逆にそれが一人称視点で語られることによってリアリティを出しているように感じる。
主人公ハツが同級生のオタク少年にな川に向ける視線は、恋愛とも違う、愛おしさと苛立ちだ。自分と同じようにクラスの仲間から孤立している人に対する親近感と苛立ち、自分とは違い何かに打ち込み、独りでいることを苦としない人に対する羨望と嫉妬、そして嫌悪、そんな「蹴りたい背中」。
主人公が蹴りたいのは自分の背中だ。にな川の背中に見ているのは現実の自分と未来の自分ではないか。
中学からの同級生の絹代はにな川と対極に書かれている。仲間とつるむこと、表面上の付き合いを嫌悪する主人公に対して、柔軟な人間関係を作ることができる絹代は世間一般の人間の代表であり、作者の一部だろう。
主人公と絹代がリアルに書かれている反面、にな川にはリアリティを感じない。主人公はにな川をずっと見ているから描写は多いが、存在感が希薄だ。主人公と絹代が作者の投影であるからリアルに書くことができて、にな川はそうではないから書くことが出来なかったのか。あるいは主人公の視点からみてにな川はリアリティのない存在なのか。後者であって欲しい。
ネットで評価を見ていると酷評しているものが多い。確かに「蛇にピアス」も含めて芥川賞に値するかというと疑問だし、文章も主題も幼い。でも確かな才能を感じる。次回作も読みたいと思わせる。
カワイイしね。 キモー
公約どおり「蹴りたい背中」を読んだのでレビューを書いてみる。
文章は、うまくはない。わかりづらい箇所も多々ある。逆にそれが一人称視点で語られることによってリアリティを出しているように感じる。
主人公ハツが同級生のオタク少年にな川に向ける視線は、恋愛とも違う、愛おしさと苛立ちだ。自分と同じようにクラスの仲間から孤立している人に対する親近感と苛立ち、自分とは違い何かに打ち込み、独りでいることを苦としない人に対する羨望と嫉妬、そして嫌悪、そんな「蹴りたい背中」。
主人公が蹴りたいのは自分の背中だ。にな川の背中に見ているのは現実の自分と未来の自分ではないか。
中学からの同級生の絹代はにな川と対極に書かれている。仲間とつるむこと、表面上の付き合いを嫌悪する主人公に対して、柔軟な人間関係を作ることができる絹代は世間一般の人間の代表であり、作者の一部だろう。
主人公と絹代がリアルに書かれている反面、にな川にはリアリティを感じない。主人公はにな川をずっと見ているから描写は多いが、存在感が希薄だ。主人公と絹代が作者の投影であるからリアルに書くことができて、にな川はそうではないから書くことが出来なかったのか。あるいは主人公の視点からみてにな川はリアリティのない存在なのか。後者であって欲しい。
ネットで評価を見ていると酷評しているものが多い。確かに「蛇にピアス」も含めて芥川賞に値するかというと疑問だし、文章も主題も幼い。でも確かな才能を感じる。次回作も読みたいと思わせる。
カワイイしね。 キモー
ISBN:4087746836 単行本 金原 ひとみ 集英社 ¥1,200
文芸春秋に「蹴りたい背中」と共に全文掲載されていたのでまず「蛇にピアス」から読んでみた。
予想通り村上龍の影響を受けてるな、と思わせる刺激的な描写。それでも歯切れのいい文体でさくさくと読ませる。
自分の身体に刺青を入れ、舌を割り、ピアスの穴を拡張することで周囲の人と同化できると信じる主人公ルイ。ルイに依存し、ルイが自分の外見に近づいていくことで喜びを感じる恋人アマ。サディストで屈折した性的嗜好の彫師シバ。
主人公の視点を通して語られるストーリーは無気力で卑猥で暴力的で哀しいが、純粋だ。
ストーリーを読ませるという小説ではなく、登場人物の心理、風景、事件の描写で読ませる小説だ。だからこそ、ラストはもの足りなかった。主人公の心理を理解できたと思ったところで突然理解できなくなり、違和感を持ったまま読み終えたという感じがする。ラストの心理をもう少し書き込んで欲しかった。
比較されがちな村上龍の「限りなく透明に近いブルー」ではラストで衝撃的な透明感を出し、ストーリー的には何も解決していないのに爽やかな読了感があったことに比べ、「蛇にピアス」ではもやもやとした嫌な感じが残った。それこそ作者の意図なのかもしれないが。
レビューなんて無理して書き始めたけど、正直しんどいわ。深く読んでないことを痛感。何回も読んでる「限りなく透明に近いブルー」に関してさえ文章にするとなかなか書けない。
これも修行と思って、次は綿矢りさの「蹴りたい背中」を書きます。
りさたん(*´Д`)モエーだし。
あと、インタビュー読んで思ったが、俺は金原ひとみの考え方は大嫌いです。
文芸春秋に「蹴りたい背中」と共に全文掲載されていたのでまず「蛇にピアス」から読んでみた。
予想通り村上龍の影響を受けてるな、と思わせる刺激的な描写。それでも歯切れのいい文体でさくさくと読ませる。
自分の身体に刺青を入れ、舌を割り、ピアスの穴を拡張することで周囲の人と同化できると信じる主人公ルイ。ルイに依存し、ルイが自分の外見に近づいていくことで喜びを感じる恋人アマ。サディストで屈折した性的嗜好の彫師シバ。
主人公の視点を通して語られるストーリーは無気力で卑猥で暴力的で哀しいが、純粋だ。
ストーリーを読ませるという小説ではなく、登場人物の心理、風景、事件の描写で読ませる小説だ。だからこそ、ラストはもの足りなかった。主人公の心理を理解できたと思ったところで突然理解できなくなり、違和感を持ったまま読み終えたという感じがする。ラストの心理をもう少し書き込んで欲しかった。
比較されがちな村上龍の「限りなく透明に近いブルー」ではラストで衝撃的な透明感を出し、ストーリー的には何も解決していないのに爽やかな読了感があったことに比べ、「蛇にピアス」ではもやもやとした嫌な感じが残った。それこそ作者の意図なのかもしれないが。
レビューなんて無理して書き始めたけど、正直しんどいわ。深く読んでないことを痛感。何回も読んでる「限りなく透明に近いブルー」に関してさえ文章にするとなかなか書けない。
これも修行と思って、次は綿矢りさの「蹴りたい背中」を書きます。
りさたん(*´Д`)モエーだし。
あと、インタビュー読んで思ったが、俺は金原ひとみの考え方は大嫌いです。