ISBN:4309015700 単行本 綿矢 りさ 河出書房新社 ¥1,000
公約どおり「蹴りたい背中」を読んだのでレビューを書いてみる。
文章は、うまくはない。わかりづらい箇所も多々ある。逆にそれが一人称視点で語られることによってリアリティを出しているように感じる。
主人公ハツが同級生のオタク少年にな川に向ける視線は、恋愛とも違う、愛おしさと苛立ちだ。自分と同じようにクラスの仲間から孤立している人に対する親近感と苛立ち、自分とは違い何かに打ち込み、独りでいることを苦としない人に対する羨望と嫉妬、そして嫌悪、そんな「蹴りたい背中」。
主人公が蹴りたいのは自分の背中だ。にな川の背中に見ているのは現実の自分と未来の自分ではないか。
中学からの同級生の絹代はにな川と対極に書かれている。仲間とつるむこと、表面上の付き合いを嫌悪する主人公に対して、柔軟な人間関係を作ることができる絹代は世間一般の人間の代表であり、作者の一部だろう。
主人公と絹代がリアルに書かれている反面、にな川にはリアリティを感じない。主人公はにな川をずっと見ているから描写は多いが、存在感が希薄だ。主人公と絹代が作者の投影であるからリアルに書くことができて、にな川はそうではないから書くことが出来なかったのか。あるいは主人公の視点からみてにな川はリアリティのない存在なのか。後者であって欲しい。
ネットで評価を見ていると酷評しているものが多い。確かに「蛇にピアス」も含めて芥川賞に値するかというと疑問だし、文章も主題も幼い。でも確かな才能を感じる。次回作も読みたいと思わせる。
カワイイしね。 キモー
公約どおり「蹴りたい背中」を読んだのでレビューを書いてみる。
文章は、うまくはない。わかりづらい箇所も多々ある。逆にそれが一人称視点で語られることによってリアリティを出しているように感じる。
主人公ハツが同級生のオタク少年にな川に向ける視線は、恋愛とも違う、愛おしさと苛立ちだ。自分と同じようにクラスの仲間から孤立している人に対する親近感と苛立ち、自分とは違い何かに打ち込み、独りでいることを苦としない人に対する羨望と嫉妬、そして嫌悪、そんな「蹴りたい背中」。
主人公が蹴りたいのは自分の背中だ。にな川の背中に見ているのは現実の自分と未来の自分ではないか。
中学からの同級生の絹代はにな川と対極に書かれている。仲間とつるむこと、表面上の付き合いを嫌悪する主人公に対して、柔軟な人間関係を作ることができる絹代は世間一般の人間の代表であり、作者の一部だろう。
主人公と絹代がリアルに書かれている反面、にな川にはリアリティを感じない。主人公はにな川をずっと見ているから描写は多いが、存在感が希薄だ。主人公と絹代が作者の投影であるからリアルに書くことができて、にな川はそうではないから書くことが出来なかったのか。あるいは主人公の視点からみてにな川はリアリティのない存在なのか。後者であって欲しい。
ネットで評価を見ていると酷評しているものが多い。確かに「蛇にピアス」も含めて芥川賞に値するかというと疑問だし、文章も主題も幼い。でも確かな才能を感じる。次回作も読みたいと思わせる。
カワイイしね。 キモー
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